私が井上幸子さんを知ったのは、私が彼女の師である渡部大三郎さんと30年前に活動を開始し、その後少ししてからですから25年くらい前になります。北国で出会ったクラリネット奏者は素敵な方ばかりでした。その中に大学生の幸子さんがいらっしゃいました。豪快さと繊細さを持ち合わせた若い音楽家は夢を追い北海道からヘルシンキへと旅立って研鑽。その後2003年に彼女のために本作を作曲しました。演奏にあたっては、楽器の持つ深い音色を大事に、そしてピアノパートに現れる音色を感じてその上で大きく歌って下さい。

彼女のナイーヴで熱いロマン性と豪快さがこの曲の原点となっています。今でも、雪の降る夜道を勢い良く車を走らせて帰って行った姿を思い出します。初演から十数年が経ち、この曲も幸子さんに熟成されて新たな命が吹き込まれました。心から感謝致します。

Bass Clarinet in B♭

Piano