ハインリヒ・ヨーゼフ・ベールマンは、ロマン派初期に活躍したドイツ・ミュンヘンの名クラリネット奏者であり、作曲家としても多くのクラリネット作品を残しました。この《アダージョ》は、本来はクラリネット五重奏曲（クラリネットと弦楽四重奏）の第2楽章として書かれたものですが、現在ではピアノ伴奏版に編曲された形で、単独で演奏される機会が多くなっています。

冒頭、半音階的に絡み合う弦楽器の動きに始まり、寄せては返す波のように息の長い旋律がクラリネットに現れます。まるでオペラのアリアのように歌心あふれるメロディー、翳りを帯びた和声の変化、そして内面から湧き上がるような劇的な表現――やがて音楽は、癒しと救いを感じさせる穏やかな終結へと導かれていきます。

ソロパートの技術的な難易度はさほど高くなく、表現力を深めるには最適のレパートリーです。このアレンジでは、伴奏がクラリネットによる同族楽器で構成されており、ソロラインが自然に際立つように工夫されています。アンサンブルでの音色の溶け合いと、旋律線の呼吸感を大切に演奏してみてください。

Solo Clarinet in B♭

1st Clarinet in B♭

2nd Clarinet in B♭

3rd Clarinet in B♭

Bass Clarinet in B♭